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マクドナルドを夢見る

「私は、自分の胃が夢見るのを知っていた。菓子パンや最中を夢見るのを。私の精神が宝石を夢見ているあいだも、それが頑なに、菓子パンや最中を夢見るのを。」

三島由紀夫の著作「金閣寺」で主人公が金閣寺を放火する直前に菓子パンを食らう場面の一文だ。読んだのは何年も昔で大方のあらすじも朧げなのに、この文章だけは、忘れていない。どんな大罪の前でも腹は空くのだ。それをこんなにも美しく描けるのは三島由紀夫三島由紀夫たる所以なのだろう。

私の胃も時たまマクドナルドを求めることがある。熱くて塩辛いポテト。大量の氷で薄くなったコーラ。しわくちゃのバンズに挟まれたしなびたレタスとパサパサのパティ。凡そ、健康的とはいえない食べ物をなぜか身体が求める。そういう日は自暴自棄になっていて良くない。

席に着いて100円のハンバーガーを下品に食いながら、金閣寺の主人公と自分が重なる。金閣寺を燃やす予定は無いにせよ、それでも、主人公と同じ狂気に満たされている気がしている。辛うじて均衡を保っているつもりでも、ほんの少し傾けば、福岡タワーが乳首に見えてくるかもしれない。ガラスの塔は燃えるのだろうか。